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  • 田山祐智

【MOKI】モキの薪ストーブ概論

さて、MOKIのMD80IIが無事に設置されたので、実際に燃やしてみた実感も含めて薪ストーブ全般のお話をしたいと思います。

まず、薪ストーブは素材別に大きく3種類に分けられます。

一般的には上記のような特性があって、重い素材ほど蓄熱性は高まりますが、逆に温めるまでに時間がかかります。

(※ハースストーン社に代表されるソープストーンの薪ストーブも扱いやすくて良いストーブなのですが、今回はより一般的な鋼板と鋳鉄のストーブに絞って比較します)

ヤマミチ建築設計事務所では、家1軒に対して薪ストーブ1台で暖房を得ることをプラン設計時の基本としており、わが家のモデルハウスでも暖房器具は薪ストーブ1台だけで十分賄われています。

では、家の大きさに対してどれくらいの性能の薪ストーブが必要なのか?

これまでにお客様の家を工事監督して見てきた経験上、私の中で一つの基準ができていました。

延床面積 30坪 → ストーブ重量 約200kg

薪ストーブメーカーの資料データに載っている、燃焼カロリー○○kcal/hや、燃焼効率○○%という数字は各社測定基準が違う(?)ようで、一概に比較できないので当てにしておりません。

その点、重さという数値は全世界共通です。

最初の表の通り、『重量∝蓄熱性』という比例関係がありますので、その蓄熱性能を以て家の大きさに合わせて提案してきました。

(実際には200kgもあれば40坪くらいの広さでも十分温められると思っていますが、小さい薪ストーブだと炉内が小さいので短い薪しか使えず不便です。)

薪ストーブとは、つまるところ『蓄暖』だと思っていますので、燃料を燃やすことでその物体にどれだけ熱を蓄えられるのかを指標として見ています。

と、ここまでが今までに培ってきた私なりの考え方でしたが、これらはすべて鋳鉄のストーブに限った考え方です。

今まで鋳鉄のストーブしか扱ってこなかったので、”同じ熱を発生するのなら”、より重い鋳鉄のストーブの方が能力的に高いと思っていました。

- * - * - * - * - * - * -

しかし、この枠の考え方では収まらないストーブを今回扱うことになりました。

それが長野県のモキ製作所の作る『MOKIストーブ』です。

今回モデルハウスに設置したMD80IIというモデルは、重量わずか70kgしかありません。

現在設置してある鋳鉄のストーブ230kgから比べると三分の一以下です。

モキMD80II

では実際に焚いてみて暖房性能も三分の一以下だったか?

もちろんそんなことはありませんでした。

十分すぎるほどの暖房性能で、これまでどおり家中が暖まりました。

では鋳鉄のストーブとの違いは何だったのか?

それは燃焼温度。

薪ストーブを設置した方はほぼ必ず温度計を付けて温度管理をします。

薪ストーブ温度計

他メーカーの物でもおおむね違わないのですが、適正温度域は「150℃~350℃」を指していることが多いです。

そして鋳鉄のストーブの場合、 おおむね300℃を超えないように焚くというのは薪ストーブユーザーにとっての常識です。

あまり温度を上げ過ぎると鋳鉄が歪んで隙間が出来たり、鉄の組成そのものが変化して脆くなったりする恐れがあるからです。

しかし、鋼板で出来ているモキストーブの場合はその上限は当てはまりません。

圧延鋼板は製造の過程でその名の通り圧力をかけて引き延ばされているので、密度が高く熱に強い素材だからです。

加えて、ボディはすべて溶接により強固に一体化されています。

実際、巡航運転で燃焼中の表面温度は400℃を超えています。

ここで、わかりやすく鋳鉄のストーブとMOKIのストーブの温度変化をグラフで表現してみます。

縦軸がストーブの温度、横軸が経過時間を示しています。 厳密なデータを入れたわけではないので、あくまでも私が使用してみてのざっくりとした数値です。

見てわかる通り、まずはピーク温度の差が大きいこと。

MOKIの方は鋳鉄のストーブでは上げられない温度域へ裕に達しています。

また、温度の立ち上がりも鋳鉄に比べてかなり早いことが分かります。

このグラフにもう少し情報を加えます。

グラフにあるピンク色の点線。

鋳鉄ストーブのピーク温度をMOKIストーブはかなり早い段階で達成します。

当然、ストーブの温かさ=部屋の暖かさですので、現実的にかなり早く暖まり始めます。

そして次にピークを過ぎた後の温度の下降角度。

温度が早く冷めるほどグラフの傾きはきつくなりますので、角度=蓄熱性ということが言えます。

鋼板製のMOKIは見た通り「熱しやすく冷めやすい」特性があるのに対して、

鋳鉄製のストーブは逆に「熱しにくく冷めにくい」特性が見て取れますね。

(ソープストーンのストーブはさらに緩やかなカーブになります)

しかし、青の点線の位置を見てください。

お互いの温度曲線が逆転するころにはだいぶ時間が経っています。

現実にはその時点では部屋は十分暖まっていて、連続運転が必要のない室温になっています。

いくら鋼板製のMOKIが冷めやすいと言っても、ピークの温度が400℃を超えているので、そこから冷めるまでにはかなりの時間を要するのです。

これがもし、ピーク温度が鋳鉄と同じ250℃程度であれば全然勝負にもならないでしょうが、MOKIストーブの場合は茂木プレートという特許技術によって非常に高い燃焼温度を作り出すので、「早く暖まって冷めるまでに時間がかかる」という理想的な状況を生むことができています。

……。

とりあえず今回はここまで。

技術的な話はまた次回…。

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