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  • 田山祐智

屋外木部用の塗料で迷うあなたへ

このブログでは当社で扱う建築建材についてたまにちらほらと書いてきましたが、ログハウスオーナーにとって大きな関心事であるメンテナンス、とりわけ塗装に関わる塗料については意図的に触れないで避けてきました。

それはまだ塗料に関しての技術的・知見的な蓄積が足りていないからなのですが、それでも我が家含めて木の家に住むお客さんにはできるだけより良い物を使いたいものです。

世の中には数えきれないほど塗料の種類があって全部試すのも不可能ですから、そこはある程度自分の見識で採用候補を見定めなければなりません。

今回の記事では、ヤマミチが今の時点で思っていることを塗料の商品名を交えながら紹介したいと思います。

塗料選びで迷うのが面倒だという方の参考になればいいですね。

ただし、当然ですが個人の経験に基づく私見ですので内容が100%正しいとは思わないで読んでくださいね。

■ 求める性能によって選ぶ塗料が変わる

まず、木部用塗料には大きく三つの軸があります。

1.水性 か 油性

2.浸透系 か 造膜系

3.化学系 か 自然系

これを、仕上がりや耐候性はもちろんのこと施工性や廃液処理等の観点から考慮して選ぶことになります。

1.水性 か 油性

※画像は拾い物です。今回の記事とは関係ありません

塗料には様々な成分が調合されていますが、その有効成分を何に混ぜてあるかという違いです。

油性だと溶剤や自然油に混ぜて、塗った後それが渇くことで有効成分が木に密着します。

水性は文字通り水です。塗った後に渇くというプロセスは一緒です。

油はぬるぬるして滑りやすいので、一般的に油性塗料は伸びが良くて施工性が良いことが多いです。

一方、水性は油性に比べると滑りも悪く乾きやすい(ムラができやすい)ので、数年前まではメジャーではありませんでした。

最近はその辺の課題を多かれ少なかれクリアした水性塗料が増えてきています。

あとは使用した後の刷毛の処理も変わってきます。

水性塗料の場合は使い終わった後は水道水でじゃぶじゃぶ洗うことができますが、油性塗料の場合は塗料用シンナー(略してトシン)で刷毛や用具を洗う必要がありますので、DIYだとちょっと面倒がかかりますね。

2.浸透系 か 造膜系

※画像のように、同じキシラデコールでも油性/水性、また浸透系/造膜系と、ラインナップが様々あります

この選択は仕上がりにとって一番大きく分かれるところです。

浸透系塗料は木部に浸み込んで有効成分を効かせ、造膜系塗料は塗装表面で膜を形成してそこで保護するという違いになります。

多くの浸透系塗料の場合、木の表面の質感をそのまま生かすことができますので、多くの方々に好かれる傾向があります。

せっかく木を使っているのですからその表情を生かしたいですよね。

逆に造膜系塗料の場合、木の表面に膜を張りますので色が透けないことが多く、塗りつぶした感じになります。

それでも塗膜はそこまで厚くないので近寄れば木目の筋は見てとれますが、遠目には材質は判別できないかもしれません。

木部用塗料で、造膜系は人気が無いためかそもそもラインナップが少ない傾向にあり、もしあったとすればそれは耐候性に非常に特化して、いくらか見た目を犠牲にしてでも性能を重視したものになっていることが多いです。

また、造膜系塗料を選ぶ際に大事なことは通気性と柔軟性があること。

木材は湿気を吸収・放出を繰り返しますので、それを妨げてしまうと内部から腐っていってしまいます。

木材用の造膜系塗料はこの呼吸を妨げないような分子構造になっていますが、昔からよくある『ペンキ』と呼ばれる塗料はそもそも鉄部用なので通気性はゼロです。

木材にペンキは使用してはいけません。内部で腐る&膜が剥がれること必至です。

3.化学系 か 自然系

※オスモは自然系塗料の代名詞と言えるほどの知名度を誇りますが、果たして本当に100%自然由来の素材でしょうか…?

画像のオスモは外部用のウッドステインプロテクターですが、化学物質の「プロピコナゾール」が含有されています

DIYユーザーほどここの選択にやたらこだわる人が多いように思います。もしくは特に意識の高いメーカー。

化学系の塗料は文字通り化学的に生成された有効成分を効果的に調合して作られたものです。

まぁ化粧品やシャンプーや洗剤なども同じですよね。それらと同様、公害になるほどの有害物質なんて今どき使われていないとは思いますが。

自然系塗料も製作の過程自体は化学系の塗料と一緒ですが、その成分が自然由来の物だという違いです。

自然由来成分は化学成分と違って調達にコストがかかるため、一般に自然素材を謳った塗料は金額が結構高いです。

ですが、当然ながら自然由来の素材ですと言えばユーザーに対してとてもアピールがしやすいので売りやすい。

そりゃ人として自然素材の方が良いよねって話になりますから。

ちなみにもっと自然素材を突き詰めると、化学物質がまだ世の中にない時代、昔の木材保護塗料は柿渋だったりしたわけですが、柿渋は外に塗っても1年持つか持たないかというレベルの耐候性です。(実証済。カビ生えた)

それでもナチュラル志向の人は昔の人の知恵をリスペクトしたいですよね?

と、こういうわざとらしい書き方をすると「自然由来の塗料は大した実力もないくせに高いだけのまがい物か!」と思いたくなりますか?

そんな簡単に誘導されないでくださいね。世の中にはそうでないものもありますから。

そういう常識の範囲を超えた例外を見つけ出すのが私は大好きなんです。

■ これまでに採用した塗料の紹介

さて、これで基本的な知識は整いましたが、塗料に求めるものは人それぞれなので正解を出せるわけではありません。

なので、ここからは私なら何を選ぶか(選んできたか)でお話しします。

うちで外部用木材保護塗料を選ぶ際の優先順位は、

1.耐候性

2.コスト

3.仕上がり

4.施工性

5.環境性

という感じです。

1番で2番を割ると「コストパフォーマンス」という言葉になります。

やっぱり私は性能重視の頭ですね…^^;

私は化学系の勉強をしたことがないので当然ながら専門外なのですが、これまで培ってきた知見と経験から、

「油性・浸透系」

の塗料は外部には基本使いたくありません。

これは系統としていやだという意味ではなく、この仕様の商品にはあまり大した性能の物がないという印象です。

色々見たり調べたり使ったりしてきて、日本で販売されている油性・浸透系塗料は五十歩百歩のように感じます。

大阪ガスケミカルのキシラデコール、三井化学のノンロット、朝日のウッドガード、大谷塗料のバトン。。。

どれも木目を生かす油性・浸透系塗料ですが、いまいち劣化が早いかなぁ…。

◆ 和信化学工業 ガードラック アクア (水性・半造膜系・化学系)

そう思って4年前にわが家を建てる際に検討を重ねて、最終的に選んだ塗料が


ガードラックアクア

でした。

水性・半造膜系の塗料で、木目はつぶれがちに仕上がりますので木目をしっかり生かしたい方には不向きな塗料ですが、何よりも『1回塗りで仕上がる』というのはコスト面で圧倒的なアドバンテージでした。

今でもコストパフォーマンスでは最高クラスだと思ってます。

なお、塗ってから4年経って2018/5/20現在の状態がこれです。

全体の中で一番劣化が進んでいるのが外にはみ出しているポーチ柱でした。

一日中日に当たって雨にも当たって環境としてはそれなりにシビアだと思うのですが、正直、「まだ塗り直さなくてももうしばらく持ちそうかな…?」と思えるレベル。

これなら十分及第点です。

ですが、破風板の赤い塗装部分はもう少し色褪せが目立ってました。

色が濃いほど退色が目立つのはしょうがないですが、こっちはもう塗り直し時期が近いかなという感じです。

その後、新築の受注をいただいた際にお客さんから要望されるのが、「せっかくのログハウスなので木目と色を自然のまま生かしたい」というものでした。

自宅に使ったガードラック アクアでは塗りつぶしの表情になるのでこの条件は満たせません。

ガードラックのもう一つの水性塗料「ガードラック ラテックス」では木目が透けるものの、耐候性があまり良くないので使いたくありません。

◆ Sashco Capture Log Stain & Cascade Clear Top (水性・造膜系・化学系)

そんな折に条件を満たす良いものを見つけました。

※耐久性が低かったため現在は採用していません

Sashco (アメリカ サシュコ社)

Capture & Cascade (キャプチャー & カスケード)

CaptureとCascadeの二つをセットで使用します。

この塗料はかなり特殊で、「水性・造膜系・木目透かし仕上げ」という特徴があります。

今までの塗料の常識だと造膜系は塗りつぶしになってしまい木目を生かせないのが普通でしたが、このCaptureは造膜するにもかかわらず何度塗り重ねても木の地肌を全く隠しません。

形成された膜は木の呼吸を妨げることはなく、また柔軟性も高いので伸び縮みします。

さすがログハウス専用に開発された塗料なだけあります。

ただ、色のラインナップが基本、茶色系しか選べません。

左側4つなんて全然大差ないし…

この塗料、Captureが着色 兼 防腐効果を担い、その上に塗るCascadeというクリアコートが紫外線防止を担い、それぞれ役割を分担しています。

それにより、劣化した際には基本的にクリアコートのCascadeのみの塗り直しとなりますので、クリアはいくら塗ってもクリア。

つまり、他の塗料のように「塗り直す度に色が濃くなる」ということがありません!!

新築時に塗った色がそのままずっと続くということです!

これは美観上の非常に大きなアドバンテージで、私の知る限りこのような特性を持った塗料は他にありません。

↑ これで塗装済みです。(Capture×2回塗り,Cascade×1回塗り)木目が完全に生かされていますね。^ー^

価格も国内有名塗料と大差なし。

しかも塗料の伸びが非常に良いので、施工性は良いわ使用量も少なくて済むわでコストパフォーマンスは最高クラスです。

ただ、この塗料を扱っている輸入商社は日本に1社しかなく、一般向けに販売はしていないので世間には流通していません。

Sashco社はアメリカの本場ログハウス向けのアイテムを多数プロダクトしていて、特にコーキング材の『Conseal』は日本のログハウスシーンでもマストアイテムとなっています。(なにせ伸び率が500%!)

◆ シオン U-OIL スーパーハード (油性・浸透系・自然系)

前々から知ってはいたものの、どうしても気になって最近使い始めた自然系塗料。

私自身は外部に使う塗料に関しては自然の物か化学的な物かは特にこだわらないのですが、この塗料の耐候性の高さに惹かれました。

シオンがプロダクトしているU-OILシリーズは自然素材使用を謳っていて、

HARD … 屋内・屋外兼用

SUPERHARD … 屋外専用

と別れていて、HARDは化学物質無添加というこだわりっぷり。

SUPERHARDは耐候性を増すために化学物質がある程度添加されていますが、私は性能重視でこれを選びます。

特に劣化の激しいウッドデッキに使うことにしました。

顔料がたっぷり入っているようで色乗りがとても良いです。

また刷毛運びが軽くて、特に2回目以降の塗装は滑るように塗れて塗料が全然使わさりませんでした。

塗った後にウエスで拭き取れば木目を生かす仕上げにもできますが、写真では塗りっぱなしで拭き取りをせずに塗りつぶしました。(当然この方が耐候性は高い)

このU-OILシリーズ、好きな色で調合をお願いすることもできますが出来上がりまで約2~3週間かかります。

でもその必要はまずないかも。

なにせ標準色のラインナップがこんなにあるし!

その数64色!(+クリア2色)

こんだけの標準色のラインナップは他メーカーにはないですねぇ。

こんな本物の自然塗料を世界レベルの品質で作っている会社が、なんと隣町の矢巾町で作っていたなんて。びっくり。

個人的にはあまり自然塗料には興味がないですが、少なくともオスモとリボスは自然塗料と呼ぶにはなんかちょっと違う気がしてしまいます。

■ ■ ■ ■ ■ ■

長々と書いてきましたが、最後まで読んでくれてる人はいたのでしょうか?

そして少しは参考としてお役に立ちましたでしょうか?

塗料に限らず、建築材料はより良いものを求めていつもアップデートをしていってますので、また別の分野の建材を紹介できるかもしれませんね。

ありがとうございました。

以下、おまけ。

書いたけど使わなかった段落。

何故かやたらとキシラデコールをこき下ろしてます。(笑)

■ どの分野でも「定番」が”最高”であることは、まずない

とりあえず、世間一般でプロも含めて一番認知度とシェアが高いと思われる屋外用塗料の代表格はこれでしょうね。

キシラデコール(油性)

キシラデコール

販売元:日本エンバイロケミカルズ(…と書いてたら、今は大阪ガスケミカルという会社に変わってました)

歴史の古い塗料で、たしかドイツからの輸入が始まりだったと記憶しています。

当時はよほどセンセーショナルだったんでしょうね。今でもほんとに猫も杓子もキシラ、キシラです。

これまでに色々な塗装屋さん(県内だけですが)に会ってきて、そのたびに「おすすめの外部用塗料って何ですか?」と聞くようにしているのですが、キシラデコール以外に答えた職人さんはいませんでした。

それくらいのド定番。

ですが、私は初めからキシラは選択肢から外しています。

値段の割にそこまで性能が高くない=コストパフォーマンスが良くないと思えるからです。(モノが悪いとは言ってない)

とはいえ、どの職人さんもキシラだけはだいたい在庫して持っているものなので、ちょっとした小さい面積だけ塗るときはキシラを使ったりも実際にはあります。

例えば我が家の玄関ドアもキシラで塗りました。

4年経ちますが、屋根がかかっていて日照時間も少なく、雨も当たらない環境下でこの劣化はちょっと早くないか…?

そしてイラっとしたのが、ある日ホームセンターで見たキシラの売り文句。

「見た目には早めに色褪せても、木材内部ではきちんと防腐効果が続いています!」

いや、塗料に求めるのはまず美観だから。

逆に美観が続くということは塗料の劣化が少ないことと直結するんだから、まず美観を維持しろよと。

なんだかんだで40年以上も前からある設計思想の古い化学塗料なんです。

これをおすすめの候補に挙げるかどうかで、その人の塗料に対する見識を測るいい指標になっています。

逆に言えば、現代にはもっとコストパフォーマンスの良い塗料は確実にあります。

それを調べていないだけ。

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