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田山祐智

感覚から探る暖房論

 先日の特許の記事で、冒頭に「年明けからは専ら鋳物ストーブしか焚いていない」と書いていたのですが、先日とある薪ストーブ屋さんと電話で会話した際にそこを突っ込まれました。

なんで改造して性能が上がったのにMOKIではなく鋳物ストーブを使っているのか?という意味で。

理由はいくつかあって、

  1. 温度維持性能がまだ鋳物ストーブには(若干)追い付いていない

  2. ストーブ配置の位置関係上、鋳物ストーブはガラス面がリビングへ向いている

  3. きれいな炎が見えている方が気持ち的にも暖まる(かみさん談)

  4. どちらかと言うと人ではなく家を温めたいという気持ち

温度の立ち上がりの遅さや煙の量の多さ(熱エネルギーの無駄)というデメリットを含めても我が家で鋳物ストーブを積極的に焚いていた理由とは…

~温度差による感覚の違い~

1.想像してみてください。

季節は冬。あなたは雪のちらつく寒空の下、数時間立ち続けていました。

体が冷え切ってしまったので、いいかげん家に帰ることにしました。

玄関ドアを開けて家の中に入ると室温は20℃。

暖かい家に戻れてなんとも幸せな気分になりました。

2.想像してみてください。

季節は冬。あなたは家の中で相方の帰りを待っています。

数時間前は暖房をフルパワーで稼働させていたので、室温が29℃まで上がりました。

これでは熱すぎると思い、消したところ現在の室温は20℃まで下がりました。

ちょっと寒く感じ、また暖房をつけたくなりました。

適当にイメージで書いてみたのですが、何となく伝わりますでしょうか?

同じ20℃であっても、片や「暖かい」と感じ、片や「寒い」と感じます。

人間は、同じ気温であっても直前の環境次第で正反対に感じるということです。

問題は2.のケース。

ずっと同じ室内にいたのに、20℃で「寒い」と感じてしまうという現実。

仮に暖房をつけ始めてから20℃に達した後もずっと20℃ちょい上くらいをキープし続けていればそう寒くは感じなかったはず。

ヘタに暖房を強く効かせすぎたために、中にいる人に「寒い」と感じさせる結果になった。

~薪ストーブに置き換えて考える~

薪ストーブの素材は大きく3種類に分けられます。

・ 鋳鉄(鋳物)

・ 鋼板

・ 石材

鋼板とは一般には熱間圧延鋼板の事を指し、製造の過程で文字通り熱と強い圧力を何度もかけながら鉄鋼を引き延ばした板の事です。

何度も圧力が加えられていますので、分子構造が密になり強度が増します。

なので同じ物を作ろうとすると、鋳物よりもかなり薄い板厚で作っても強度的に成り立ちます。

多くの鋼板製ストーブの板厚が薄いのは、この、強度とコストのバランスがいいからですね。

そうした薄い鋼板製ストーブの特性は「熱しやすく冷めやすい」

つまり、時間経過による温度差が大きいということになります。

前述の通り、気温の落差は人を寒く感じさせます。

なんとも相性の悪い話です。

同じ温度を保ち続けるために要する手間は、間違いなく鋳物やストーンの方が少なくて済みます。

うちのMOKIは改造を施して大分特性が変わりましたが、それでもやっぱりまだ鋳物の保温性には(若干)敵いません。

~我が家にとって~

 うちの場合は自宅をモデルハウス兼事務所として使っているので、家にいる時間が長い家庭です。

家にいる時間が長い分、薪ストーブもずっと焚き続ける傾向にあります。(特に今年の冬は寒かった~ >_<)

そうなると、安定して200℃~230℃位を長くキープし続けてくれる鋳物ストーブの方が実体感として暖かく感じて、さらに薪をくべる頻度が少なくて手間がかからず、相性が良いのです。

逆に、夫婦共働きで朝8時台には家を出ますよ。という家庭であれば、即効で暖まってくれる鋼板製ストーブのほうが相性は抜群です。

薪ストーブをオブジェやおもちゃではなく実用品として使いたければ、生活スタイルに合わせて選定することが大事ですよ。

おしまい

*  *  *  *  *  *  *

おまけ

~暖房の種類~

 当社では新築やリフォームの際に暖房器具をお客さんに勧める機会があれば、その時は薪ストーブかFFストーブ(輻射式)の二つしか勧めていません

でも大体はお客さんご自身で決めてますが。

世の中に暖房器具は実に様々ありますが、熱を伝えて温めるという理屈から言えば以下の3種類にしか分類されません。

それは中学校あたりで習った伝熱の3要素のことで、

熱伝導 … 温度の高い方から低い方へ物体を通じて熱が移動する現象

熱対流 … 温度差によって空気が移動する現象

熱放射(輻射熱)… 熱が電磁波となって放射される現象

この3つ以外に要素はありません。

薪ストーブの場合、直接手で触って暖を取る人はいません。(笑)

つまり熱伝導はあり得ませんので輻射熱と熱対流による暖房効果ですね。

FFストーブ(輻射式)の場合も、薪ストーブと同様です。

ただFFのラインナップでも、デザイン性は落ちますが天板が熱くなるタイプの方が熱対流が起きやすいので暖房効率高そうです。

ただしFF温風ストーブ、テメーはダメだ。

続いてエアコンの話。

エアコンの場合は機器内部で作られた温風を室内に強制対流させるものです。

この『風』というものが私がメイン暖房として勧めない理由。

なぜなら人は気流に当たり続けると不快感が生じます。

オフィスや飲食店なんかで天井埋め込み型エアコンがあると、その下の席にいると非常に不快な思いをしませんか?

あれは温度うんぬんもそうですが、気流(風)のせいですよね。

もう一つは送風による過乾燥。

エアコンは湿度を下げ過ぎる!

最新鋭の住宅、多くの高気密・高断熱住宅は湿度が低すぎます!

過乾燥というのもこれまた不快なものです。

風邪を引きやすくなるし、喉は痛くなるし、肌にも良くないし、何より湿度が低いと体感温度が下がる。ろくなことがありません。

例えば気温が同じ20℃でも、湿度50%の空間と20%の空間では体感温度が違います。

湿度の低い部屋では20℃程度では寒く感じてしまうので、暖房を強めることになり、光熱費が余計にかかってしまいます。

当社で関わったお客さんには100%、温湿度計(100均で可)を置くことを推奨しており、状況によって加湿器の使用を勧めています。

我が家はログハウスなこともあって、一部の時期を除いてほぼ一年を通じて快適湿度である40%~60%をキープしてくれます。(快適)

ただし、薪ストーブやFFストーブであっても、家のサッシの断熱性能が低い(アルミ枠単板ガラス等)場合は、設置位置によってはコールドドラフトが起こるので注意が必要です。

コールドドラフトとは…

 窓から離れた位置に置かれた熱源により、熱対流によって窓付近で冷やされた空気が下降気流となって足元付近に流れ込む現象。

「頭が熱く足元が寒い」という最悪の不快環境が生まれる要因。

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